ART OSAKA 2021
言上真舟 / 西原東洋
7 月 18 日(日) - 20 日(火)
ART OSAKA 2021
言上真舟 / 西原東洋
7月と言えば、ART OSAKA
コロナ禍で落ち着かない世の中ですが、今年はホテルから大阪市中央公会堂に会場を移しての開催です。
出品作家は、言上真舟、西原東洋
2人共ART OSAKAには2回目出品です。
言上 真船
Grass Work / Ambivalent daybreak(未だ来ぬ夜明け)
未だ駆け出しの作家活動をしていた時代、高価なガラス材料を買う制作費が無くて交通事故の現場に散乱した自動車のフロントガラスの破片を拾い集めて制作した事もあると言う作家は、今や公立の美術館に作品が収蔵される売れっ子に成長しましたが、作品を構成するガラスはどんな時でも人に、美しく危険な壊れやすさを思い起こさせます。
特に不純物が無く唯々透明で壊れやすいガラスは、シンデレラの靴の様に、詩や物語で若くて純粋な女性の壊れやすい将来への夢にたとえられますが、アクセサリー用の繊細なチェーンで割れたガラスの破片を数えきれない位つなぎ合わせて再構築されたガラスのドレスは、割れたしまって今にも無くなってしまいそうな夢を再構築する努力によって、きっと次の夢が来ると信じる「痛い」女性の感性をストレートに表現していて、女性だけでは無く、老若男女この作品と出会った全ての鑑賞者を涙が出る様な純粋な感動を呼び起こす美しさで魅了するのです。
西原 東洋
Mix media Abstract /「崩壊も形成も内包する記憶の存在」
西原東洋の アブストラクトの作品です。
アブストラクトは1900年代初頭に顕著になった絵画様式の一つで、写真技術の発展に依って写実的な絵画の価値が薄れていく中で現実の対象の再現を意図せず、抽象的な形の構成と色の組み合わせにより、視覚から鑑賞者それぞれが持つ感覚を呼び覚まそうとする作品です。
様々な種類の絵具、コンテ、鉛筆や下地材など造形要素一つ一つの持つ可能性を追求しながら、ミックスド・メディアと呼ばれる手法で制作された作品の最大の特徴は漆喰塗りの古い壁を思い起こすエイジング(古びさせる)されている画面背景です。
江戸や室町時代の町屋の古い漆喰壁、ローマやフィレンツェのフレスコ画に続く壁と同じように、歴史に続く現代の時間を彷彿とさせる背景は現実に存在する記憶のもっと以前から存在する「今」が崩壊と形成を繰り返す歴史の断片である事を鑑賞者に気づかせます。
しかし、現実の記憶では昔カフェに有った筈のタバコの煙、まきストーブから漏れる木の焼けた臭い、開けた窓から埃っぽくて暑い風が運んでくる砂埃だったりするのですが、描かれた抽象的な形と色、質感に依ってしばらくさまよっていた感覚は鑑賞者の腑に落ちるイメージへと誘われます。
そして又、はっきりはしないけれど、対象が何を示すか認識出来るイメージが描かれている場合は鑑賞者の記憶ははっきりとするのですが、描かれた意味に確証が持てず、限りない謎解きゲームに誘われる事に成ります。
とりわけ、それが誰かのポートレイトの場合はタイトルが示す人名はそれが歴史上の偉人であれば現代に定義される詳細な画像と偉業の記録はエイジングされた過去の事実が時空間を移動しながら変質しているイメージでは無いかと疑われるのです。
西原 東洋 のアブストラクト作品で私たちはそこに描かれた過去、現代、未来へと流れながら古びていく時空を観て、記憶の存在と過去の関係を知る事に成るのです。